ごあいさつ
わが国の教育の進路をめぐって、様々な議論が展開されています。そこでの中心的な課題になっている制度的な改革の必要性もさることながら、子どもの現実に即した改革こそが、「次世代を育てる教育」には欠かせない条件であります。多様化した社会の中で、その構成員である子どもたちが一律の方策で意味のある成長を遂げるとは思えません。
教育改革について全世界に向けてリサーチしてみると、「プログラム型教育」から「プロジェクト型教育」への転換が急速に進行しています。とりわけ、アメリカで開発され普及しているエドビジョン・モデルにおける「プロジェクト・ベース学習(PBL:Project-Based Learning)は、子どもの自主性を尊重し、自律学習者としての成長を願って、興味あるテーマから総合的に学習を組み立てます。また、緻密に設計された評価システムによって、「学力保障」の機能も併せもっています。
この優れた教育方法であるエドビジョン型PBLを日本において本格的に普及させることを目的に、NPO法人「日本PBL研究所」を設立しました。
日本PBL研究所の使命は、アメリカで実施されているエドビジョン型PBLを日本流にアレンジすること、そして既存のカリキュラムへの導入支援、さらにはPBL校設立及び設立支援にあります。そのために、アメリカ側との交流や交渉、カリキュラムモデルの開発、指導者の養成などの各種事業を積極的に推進します。
日本PBL研究所は、PBLの日本への紹介・普及を通して、子どもたちに学ぶ楽しさを伝え、「学びから始まる」教育改革の一翼を担うことを目指します。
設立時理事長 上杉 賢士
PBLとは
What’s PBL?
ミネソタ・ニューカントリースクール(MNCS)で開発された「プロジェクト・ベース学習(Project-Based Learning)」は、「自律学習の育成」を目標とする現代にふさわしい学びのスタイルとして、10数年にわたる実績を重ねてきました。
その成果に注目したゲイツ財団〈ビル&メリンダ・
(Bill & Melinda Gates Foundation; B&MGF)〉 の財政的援助を受け、支援組織としてのエドビジョン(EdVisions)の積極的なプロモートにより、導入する学校が急速に増えています。現在では、地域的条件や学習者のニーズに応じた教育方法として多様な展開を見せています。
Why PBL?
PBLを取り入れている学校では、
「自分を表現する場があり、どのようなレベルであろうとそれを受け入れてくれる大人や仲間がいる。加えて、皆自分がやりたいこと、学びたいことが分かっている。…彼らに会って、そこには本物の学びがあると確信した。だから、あんなに生き生きとしているのだ。」(「プロジェクト・ベース学習で育つ子どもたち~日米18人の学びの履歴」より)
だから、日本にもこんな学校があったら‥‥
What’s EdVision?
1994年、ミネソタ州南方にあるミネソタ・リバー・バレーに住む教師たちが集まり、思春期の子どもたちのニーズにあった教育を行うべく、MNCSの創立とEdVisionsという教師による全米初の協同組織を設立しました。
革新的な教育を促進するために、同様の学校の開校支援、プログラム・評価の開発支援、学校運営支援、教師トレーニングなどを行っています。
彼らが行う教育改革の4つのコアは、「民主的な学校文化」「PBL」「真正評価」「教師のオーナーシップ」です。この4つのコアが効果的に機能し合い、よりよい関係性の中で自律学習者としての有能な社会人が育っています。